いつでも新鮮なおもてなしを 四季を取り入れた源氏物語アートワーク

 

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nana's green teaには、月毎に入れ替わる「茶花」という花をあしらったアートワークの他に、上の写真のようなアートワークが多数かけられています。

お店の壁面にかかるこのアートワーク、じっくりと見てみたことはありますか?

 

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鮮やかで柔らかい色合いのアートワークたち……これらは「源氏物語」の物語をモチーフとしたアートワークで、私たちは「源氏物語アートワーク」と呼んでいます。

 

「源氏物語」は平安中期に成立した物語。

今年の大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部が書いた物語と考えられています。

美貌の貴公子・光源氏と彼にまつわる人々、光源氏の栄華と没落等が描かれる物語は、今なお人々の心を惹きつけてやみません。

そんな「源氏物語」は、54の章(54帖)から構成されており、これらをモチーフとしてデザインされたのが「源氏物語アートワーク」です。

 

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例えば上の写真、これは左から「早蕨」「絵合」「紅梅」「初音」の帖をモチーフとしたデザインで、いずれも春の様相を表しています。

 

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この写真は左から「明石」「澪標(みおつくし)」「竹河」「蛍」「常夏」。

夏の様相を表すデザインですね。

このように、54帖のうち「桐壺」「夢浮橋」を除いた52帖を、物語の内容に沿って四季に分け、アートワークを作成しました。

春のアートワークは3〜5月、夏は6〜8月、秋は9〜11月、冬は12〜2月と、季節が変わるたびに架け替えています。

 

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(秋:上段左から「関屋」「藤袴」「松風」「御法(みのり)」、下段左から「橋姫」「篝火」「鈴虫」「東屋」) 

 

nana's green teaは、全店舗で内装デザインが異なることが特徴(ぜひこちらの記事も読んでみてくださいね)。

そのため、各季節それぞれ13種類のアートワークがありますが、どれをどの場所に、どの順番で掛けるかはお店が独自に考えているんですよ。

 

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 (冬:左から「梅枝(うめがえ)」「真木柱」「幻」「若菜 下」「行幸(みゆき)」「末摘花」「須磨」)

 

これらのデザインはすべて、日本の伝統的な模様を用いてデザインされています。

そして各季節で、季節にふさわしい配色をしており、屋内でも季節感を感じられるように工夫されています。

 

 

……近づいてみると、アートワークの右下に、小さく何かが書いてありますね。

(このアートワークは「胡蝶」。春のモチーフです。)

 

全てのアートワークには右下に、モチーフとなった帖の名前と、「源氏香」と呼ばれる記号が入っています。

この不思議な幾何学模様は、52種類のアートワーク、つまり52帖の帖名すべてに対応した記号があります。

 

 

これは「香道(こうどう)」という、香木の香りを鑑賞する芸道の、「組香(くみこう)」という遊びの中で、作られた記号です。

「組香」は、5本の香木を順番に焚いていき、同じ香りを当てて楽しむ遊び。

1本目〜5本目までの香木をひとつずつ焚き、一通り香りを聞いたあと、どの香木が同じ香りだったか、ということを示した答え合わせの図が「源氏香」なのです。

 

「源氏香」の5本の縦棒は、焚かれた香木に対応しています。

1番初めに焚かれた香木が一番右の縦棒、最後に焚かれた香木が一番左です。

一本ずつ香りを聞いていき、同じ香りだと思ったものの縦棒を、横線で繋いでいきます。

1番目、3番目、4番目が同じ香りで……、2番目と5番目も同じ香り……。1, 3, 4番の香りと、2, 5番の香りは違うもので……。──

ということを、上の写真「胡蝶」の「源氏香」は示しています。

 

この5本の線を利用して作られる記号は52通りあり、それが「源氏物語」のそれぞれの帖の名前になぞらえられています(「桐壺」「夢浮橋」を除く)。

この「源氏香」は、江戸中期ごろに考案されたのだそう。

もともとは「組香」のための記号でしたが、着物の模様や家紋にも使われるようになりました。

香りを聞き分ける遊びに「源氏物語」の帖の名前をつける……、なんとも風流な名付け方ですね。

 

 

 

「源氏香アートワーク」は、お店によってポストカードとしても販売しています。

見かけた際は、ぜひお手に取って見てみてくださいね。

 

 

 

茶の湯の世界では、お客様に喜んでいただけるよう、「茶」のみならず様々なかたちでおもてなしの想いを表現します。

nana's green teaではその考えを受け継ぎ、ご提供する商品だけでなく、店内のデザインや、さまざまなアートワークなどによって、お客様に快適にお過ごしいただけるお店づくりをおこなっています。

 

季節によって風情の変わるnana's green tea。

なんでもない風景のような変化かもしれませんが、ほんの少しずつ季節が変わっていくように、 来店するたびに少しずつ異なるnana's green teaでぜひおくつろぎください。

 

 

撮影:*宮本啓介 **takahiro kumada ***山本育憲

 

 

 

 

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